夫婦において「介護」といえば、ほとんどの方が真っ先に「親の介護」を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、ときに介護の対象が夫や妻になることもあります。中には、夫婦間の介護が引き金となって離婚を招くことも――。今回は、夫婦間介護による離婚について考えてみましょう。

夫婦間介護の実状

介護の対象となるのは、親だけではありません。夫婦のどちらかが先に要介護者になるケースは決してまれではなく、また近年増えている若年性のアルツハイマーや、血管の病気などによって若いうちから介護が必要になるケースもあります。

しかしそんなとき、必ずしも「夫婦だから介護するのは当たり前」とはいかないようです。そもそも愛情がきちんと通っている夫婦であっても、介護は簡単なものではありません。夫婦関係がこじれていれば、介護に抵抗を感じてもおかしくはないともいえます。

ある調査では、「配偶者の介護をしたいか」という質問に対し、「したい」と答えた人の割合は男性が約8割であるのに対し、女性は約6割であったという結果が出ています。女性のほうが配偶者の介護に対し積極的でない割合が多い理由には、それまでの生活において積み重なってきた夫婦関係の不満が関係しているようです。

もちろんこの問題は妻から夫に対してだけでなく、その逆も同じことがいえます。お互いに、これからの人生を相手の介護にかけられるか、それだけの愛情があるのかということがポイントになると考えられます。

夫婦間介護による離婚例

夫婦間の介護を理由にした離婚には、次のようなケースがあります。

  • 長年の不満がたまっていた
    「自分が主に稼いでいるからと、ずっと偉そうにされてきた」、「夫の親の介護をして疲れ切っていたときも、夫は一切感謝もなく、いたわってもくれなかった」など、夫に対する長年の不満がたまっている場合があります。そんな場合、妻の夫の介護への抵抗感は強く、離婚を決意する結果になります。
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  • 介護に疲れ切ってしまう
    はじめは、認知症になった夫を自宅で介護する人も多かったりします。しかし、自分だって、体に不調を感じたり、疲れやすくなっているわけです。そうすると、介護に疲れ切って愛情も冷めてしまい、第二の人生を歩むためにも離婚したいと考えるようになるのです。
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  • 自分を認識してくれない
    認知症になると、配偶者が自分のことをすっかり分からなくなってしまうことがあります。肉体的な介護の辛さはもちろんですが、自分のことを認識してくれない相手に尽くすのは並大抵のことではありません。その辛さに愕然とし、離婚に至ることもあります。

離婚に至らないためには

長年連れ添った夫婦がどちらかの介護をきっかけに離婚するというのは、ちょっとショッキングな話であり、またとても寂しい話です。最後に、そのような事態を避けるためにできることを考えてみましょう。

  • 日ごろから夫婦間でよく話をする
    会話がなかったり、行き違いが多かったりすれば、当然夫婦間の信頼関係は崩れてしまいます。日ごろからよく話をして、お互いをいたわり合う関係の構築を目指しましょう。
    何気ない会話とともに、「ありがとう」、「いつも感謝しているよ」、そんな言葉がけも大切なのではないでしょうか。
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  • 体調管理を心がける
    そもそも、介護が必要にならないよう健康を気づかうことも重要です。食事や睡眠、運動など、意識して気にかけ合いましょう。
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  • 介護が必要になったら相談する
    介護が必要になったとき、一人で抱え込むのは危険です。一人での介護は、いずれ疲弊してしまいます。可能であれば配偶者の家族に助けを求めたり、地域包括支援センターのケアマネージャーに相談したりしましょう。

超高齢化が進む今、介護はとても身近な問題です。日頃から、介護について当たり前のように語り合える夫婦であることが、理想的だといえるのではないでしょうか。

専門家:小泉 道子■専門家プロフィール:小泉 道子
離婚テラス(相談機関)」及び「 家族のためのADRセンター(法務省認証機関)」代表。家裁勤務経験をいかし、悩めるご夫婦の仲裁役として奮闘中です。


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