職場に復帰したママたちを悩ませるのが“仕事と育児の両立”。毎日の業務や日々の家事に追われて、なかなか子どもとの時間を作れない人も多いようです。心に余裕がなくなると、子どもが言うことを聞かないときなどに、ついイライラしてしまいますよね。

「ままのわ」の読者からも、こんな投稿がありました。

ほめてのばすがモットーだと思うのですが、
どうしても注意しなければならないとき、
どのような声がけをしたらよいでしょうか?

シチュエーション別に何パターンか魔法の言葉を教えてほしいです

 
そこで今回は、多方面で注目を集める「花まる学習会」の代表として、数多くのお子さんを導いてきた高濱正伸さんに、子どもとの接し方についてのアドバイスをいただきました。

■「良いお母さんにならなくてもいい!」

数多くの親子と接してきた高濱さんに、まずアドバイスをいただいたのは、無理に褒めて伸ばそうとする必要は全くないということでした。子どもが主体的に行動したり、本当に成長するのは、“自分のことで愛する母親が喜んでいる”と感じているとき。褒めることは、それを伝える表現の一つに過ぎないそうです。だから、かたちだけ無理に“良いお母さん”でいようとすると、それが出来ない時に罪悪感を覚えて、その結果さらに自分を苦しめてしまう悪循環に陥ってしまうとのことでした。

また、“魔法の言葉”などのノウハウに頼ってしまうことも危険とのこと。自分が少しも安らいでいない状態で「すごいね」などの前向きな言葉を伝えても、子どもは本心を察知して違和感を覚えてしまいます。「ちゃんと子育てしよう」と思い詰めずに、自分をどうしたら喜ばせられるのか、それを考えることが大切だということでした。

「普段の子どもとの生活のなかで、嬉しいことはたくさんありますが、不安定な気持ちでは喜びを感じられません。しかし自分の気持ちが楽で、安心感に満ちていると、子どもの優しさに『ありがとう』と素直に言えるんです。つまり、まずは自分に矢印を向けてほしいということ。これが今のお母さんたちに最も強く伝えたいポイントですね」

それでも、子どもが着替えに時間がかかっていたり、注意しても言うことを聞かなかったりして、イライラした時に有効なのはタイムを計ること。「よーい、どん!」と言われると、子どもたちは自然と体が動きます。お母さんもゲーム感覚で一緒に準備をすれば、毎日の生活が楽しくなるのではないでしょうか。

■働くママの気持ちを楽にするポイント

気持ちを楽にするためには、いくつかのポイントがあると高濱さんは話しています。平常時に不安が込み上げるようなら、「ねぎらってもらっていない」、「気遣ってもらっていない」、「誰も分かってくれていない」というように、心が不安定な状態です。それを解消するためには、以下のことを意識することが大切です。

1.育児の体験を共有できるコミュニティに身をおく
2.データや周りと比べて焦らない
3.子どもと一緒に過ごせる時間が短くても罪悪感を覚えない

1については、今まさに皆さんが「ままのわ」で行っていることです。自分と同じような子育て中のママと交流し、普段の想いをさらけ出すことが、心の安定につながります。実母との関係が良好ならば、子育てを手伝ってもらうことも有効な手段だそうですよ。

2は例えば“ハイハイを始める年齢”や“捕まり立ちの時期”などです。データや周りの子と自分の子どもを比べて「発育が遅れている」などと不安になる母親も多いようですが、子どもの成長の仕方は人それぞれ。ゴロゴロと転がったり、腹這いで移動してみたりと、ひとりひとりができるようになる速度は違います。なので、社会に蔓延しているデータを見て、不安になったりする必要は全くないとのことでした。

そして、高濱さんが最も強調していたポイントが3です。働くママの中には、バリキャリや専業主婦と自分を比べて、「仕事も母親としても不十分」と感じている方が多いそうです。なので、仕事と家事に追われてしまい、子どもたちと一緒にいられる時間が少ないことに罪悪感を覚えてしまうのだとか。しかし、幼少期を過ぎた子どもにとって、長時間一緒にいる母親が必ずしも良いわけではないと、高濱さんは話しています。

「母親が自分の世界をもって、保育園の迎えや食事の準備などを一生懸命にやっていれば、子どもは喜びを感じます。愛情さえ伝わっていれば、時間にこだわる必要は全くありません。今までにたくさんの母子を見てきたので、それは自信をもって言えます。仕事で50点、お母さんで50点、合計100点で良いのではないでしょうか」

■兄弟や姉妹の育児に効果絶大の“一人っ子作戦”

複数の子どもを育てている家庭では、“兄弟や姉妹間の愛情の差”が問題になりがちです。「ままのわ」の読者からも、こんな投稿がありました。

兄弟の育児について知りたいです。
3才と5ヶ月の子どもがいます。
どうしても、上の子には厳しくなってしまいます。
上の子に寂しい思いをさせていることはわかっているのですが、私も余裕がなくて。
最近は、まだ赤ちゃんの弟に意地悪をしたり、
叩いたりするときがあります。
そんなとき、私もカッなってしまい、
かなり強くしかってしまいます。

上の子には、どうやって接してあげるのがいいのでしょうか?

 
このように兄が弟に意地悪をするケースはよく見られますが、高濱さんによると、それらはほぼ100%嫉妬の感情が関係しているとのこと。つまり子どもは、自分にとって偉大な存在の母親を、独占したい生き物なのだということでした。

そんな、兄弟間での愛情の差を埋めるための、有効な方法があるそうです。それは、兄弟姉妹を一人ずつ母親と二人っきりにして、母子水入らずの時間を作る“一人っ子作戦”。一人の子とじっくり買い物や会話を楽しむことで、その子の心が休まります。

一緒に出かける時間がなかったり、他の兄弟を誰かに預けられたりしないときには、毎日ご飯を食べた後に5分ずつ順番に膝に乗せ、抱っこするだけでも態度が劇的に変わるそうですよ。

「一番上の兄や姉が拗ねている場合は、二人っきりの空間で抱っこしてスキンシップしながら、『あなたが一番好きよ、これらかも弟を一緒に育ててね』と言ってあげることが有効です。そうすると、自分がお母さん側にいると思えるので、『分かったよ』と納得できるのです」

高濱さんによると、このように母親を一時的に独占することで、今まで多くの親子が関係性を修復してきたそうです。本当に劇的に変わるそうなので、“自分の心を楽にする”ことも意識しながら、無理なく実践してみてはいかがでしょうか。

 

【Profile】
高濱 正伸 (たかはま まさのぶ)

花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長、算数オリンピック委員会理事。
「メシが食える大人に育てる」という教育理念が多くの支持を集め、父母向けに行なっている講演会は毎回、キャンセル待ちが出るほどの盛況ぶり。「情熱大陸」(毎日放送/TBS系)、「カンブリア宮殿」(テレビ東京)などのTV番組にも出演。
主な著書に、『働くお母さんの子どもを伸ばす育て方』(実務教育出版)、『わが子を「メシが食える大人」に育てる』(廣済堂出版)、『夫は犬だと思えばいい。』(集英社)など


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