妊娠・出産に効く漢方と養生法

つらい「妊娠・出産の症状」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

ストレスをためず、軽い運動を



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

妊娠中の女性の体の変化には個人差があり、とくに不快感はなく、心地よく過ごしている人もいますが、つわりになったり、切迫流産や早産になったりするなど、予想できないことの連続です。

つわりは、とくに、においや食の嗜好には敏感になりがちで、今まで好きだった食べ物がおいしいと感じなくなったり、ご飯を炊くにおいも気になったりするなど、さまざまな変化が起こります。

その原因には、気の巡りが悪いことや水の滞りがあることが考えられます。妊娠すると、妊婦さんは、ほぼ全員、水毒(すい どく)になります。そのため、むくみが出たり、ひどい場合は高血圧になったりします。

また、血虚(けっ きょ)もよくみられる症状で、貧血や立ちくらみなどが起こることがあります。

一方の切迫流産や早産は、おなかの張りが強くなることで起こると考えられます。そこで、緊張をゆるめる作用のある芍薬(しゃく やく)を含む処方を使うことになります。

つわりは、赤ちゃんからのメッセージだという考え方もあります。食べないで欲しいものや、食べて欲しいものを赤ちゃんが伝えてきていると言うのです。

また、それまでの食生活や生活習慣によって母体に出ている影響を、この時期にリセットしようとしているという見方もあります。

どちらにしても、つらいことには変わりがないので、症状を少しでも和らげるようにするのがよいでしょう。

なお、食べられないと胎児が育たないのではないかと心配する人もいますが、そんなことはありません。食べられるときに食べられる物を食べたらいいと気楽に考えることが大切です。

妊娠の症状には個人差があり、また、同じ人でも、一人目はつわりが重かったけれど、二人目はそうでもなかったなど、妊娠するたびに異なります。しかし、つわりや妊娠高血圧症候群などは二度目も出ることが多いので、一回目の妊娠で症状があった人は早めに漢方薬を飲むことをおすすめします。

漢方処方

*妊娠時の万能薬は、当帰芍薬散

妊娠時に、もっともよく使われるのが、婦人科系の病気の処方としても代表的な漢方薬、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)です。安胎薬(あん たい やく)と呼ばれ、もともとは、妊娠時の腹痛の薬として処方されていました。

血虚(けっ きょ)に対する漢方薬なので、貧血に効果があり、また、水毒の漢方薬として、むくみを改善する作用もあります。そこで、現在では、腹痛に加えて、妊娠時の貧血や高血圧症候群に対する漢方薬としても使われています。

妊娠の初期から出産時にまで使うことができる便利な処方なので、一回目の妊娠で高血圧症候群やむくみが認められた人は、早い時期から内服をおすすめすることがあります。

また、不妊や習慣性流産のある人などにも処方されます。まさに、女性のための万能薬と言えます。

*つわりがある場合

よく使われる漢方薬は、香蘇散(こう そ さん)です。つわりには紫蘇がよいとされており、この香蘇散にも入っています。

吐き気に対しては、半夏(はん げ)と茯苓(ぶく りょう)の組合せも有効で、小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)、茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)が使われます。

また、胃腸のもたれや体力回復に効果のある人参湯(にん じん とう)を処方することもあります。

ただし、つわりがひどいときは、エキス剤すら飲みたくないと感じることがあります。その場合は、生薬(しょうやく)を粉末にして内服すると飲める場合があります。それでもつらいときは、漢方薬ではなく、紫蘇酢(し そ ず)なども効果があります。ドラッグストアでも売っているので、ためしてみるとよいでしょう。

つわりは、悪化すると入院になることもある症状です。体調が悪いときには、無理をせず、主治医に相談しましょう。

*風邪を引いた場合

よく使われるのが、香蘇散(こう そ さん)です。現在では、気分が落ち込むなど、抑うつの傾向のみられる人に使うことで知られていますが、もともとは、風邪の処方です。

風邪とは、読んで字のごとく、風の邪(じゃ)であり、気の巡りをよくすることで風邪を追い出そうというものです。

なお、風邪で咳や喉の痛みが続く場合には、麦門冬湯(ばく もん どう とう)を使います。悪寒がして、風邪かなと思うようなときには、桂枝湯(けい し とう)がおすすめです。

*むくみや妊娠高血圧症候群がある場合

むくみや妊娠中の高血圧には、水毒が関係していることが多いので、余分な水分をのぞく作用のある漢方薬、五苓散(ご れい さん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を処方します。悪くなってから飲むのではなく、早めの内服が効果的です。


西洋医学の考え方

 妊娠初期は、つわり。後期は、むくみや妊娠高血圧症候群などの症状があらわれやすくなります。医師の指示に従いながら生活習慣をととのえますが、ひどいときは、漢方薬をすすめられる場合もあります。


症状

妊娠中は、短期間でホルモンのバランスが変わるため、さまざまな不調が起こります。 

具体的な症状としては、初期は眠気、頻尿、食欲不振、食欲増加、便秘、貧血、つわりによる吐き気やむかつきなどがあります。妊娠4~6週目から12~16週目の時期は、胃のむかつきや吐き気を感じるつわりが起こります。

つわりの症状が強く、食べ物だけでなく、水も受けつけなくなって脱水症状を起こすなど、日常生活に支障をきたすような場合は、妊娠悪阻(お そ)と呼び、入院が必要になる人もいます。

また、妊娠中は、月経前に増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)が、普段の何倍も出ることが原因で、むくみやすくなります。

中期以降になると、切迫流産、妊娠に伴ってみられる高血圧、たんぱく尿、むくみ、1週間に500g以上の体重増加などの症状の一つ、もしくは二つがあらわれる妊娠高血圧症候群の症状が起こりうる可能性があります。

妊娠後期(6ヵ月以降)は、基本的には安定期に入りますが、さらにむくみやすくなります。これは、おなかの中で大きくなった子宮が血管を圧迫して、血液やリンパの流れが悪くなるためです。

ほかにも、内臓が圧迫されたような感覚になり、息苦しさや、胃もたれなどがあらわれることがあります。これを第二のつわり、と呼ぶ人もいます。

また、ホルモンの影響と、大きくなったおなかの負担により、腰痛を起こしやすくなります。食欲が増加して、食べ過ぎや妊娠高血圧症候群や、切迫早産などの可能性もあります。

そのほか、妊娠期間中に、風邪を引いたり、花粉症の症状が出たりする人もいると思います。風疹の感染なども、問題になっています。しかし薬の服用は、漢方薬であっても絶対に自分では判断せずに、担当の医師に相談してください。


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