更年期障害症候群に効く漢方と養生法

つらい「更年期障害症候群」改善-漢方医学、西洋医学での対処法

気を巡らせて、イライラを改善



  • 出典:株式会社法研「女子漢方」
  • 著者:矢久保 修嗣 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 科長
  •    木下 優子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 外来医長
  •    上田 ゆき子 日本大学医学部附属板橋病院 東洋医学科 救急担当医長


漢方医学の考え方

症状

更年期障害とは、おもに、閉経を挟んだ前後10年くらいの間に、のぼせやほてり、顔が赤くなる、息切れ、イライラしやすい、発作的な頭痛、動悸がする、手足に汗をかくなどの症状があらわれます。その多くは気逆(き ぎゃく)の症状と一致しています。そこで漢方では、気逆の治療をおもに行います。

気逆が起こる原因は、更年期の前後に、五臓の腎が加齢によって衰えることで、ほかの臓腑とのバランスが悪くなるためだと考えられます。

気逆になると、うまく巡れなくなった気が上昇して、気が不足します。これが、頭はのぼせるけれど足は冷えるという”冷えのぼせ”が起こる原因です。

また、気は血や水に比べて動きやすい性質をもっているので、症状が移り変わりやすくなっています。これが、「更年期は不定愁訴」と言われる原因の一つです。

なお、気の流れは呼吸や運動によってととのいやすくなります。つまり、更年期障害は、日頃から適度な運動をすることで軽減できるのです。

逆に、もともとストレスがあったり、気分が落ち込みやすく、気に異常が疑われる症状がある人は、更年期の症状も出やすくなっているので注意が必要です。

そして、更年期の症状が気逆の症状とよく似ているために、更年期ではない気逆の女性が、「自分も更年期?」と考えてしまうこともよくあります。

更年期障害は、卵巣機能の衰えによるエストロゲン(卵胞ホルモン)の急激な低下によって起こるものなので、きちんと月経がある若い人などの場合には当てはまりません。

ただし、漢方治療はどちらも気逆の治療になるので、結局、両方に加味逍遥散が処方されることが多いのです。

漢方処方

*更年期障害のNo.1処方・加味逍遥散

「更年期障害と言えばこれ!」と言うくらい代表的な気逆の処方が、加味逍遥散(かみしょうようさん)です。

逍遥という処方名は、そぞろ歩きという意味もあり、移り変わる多彩な症状があるときによく使われます。冷えのぼせや動悸などの身体症状と、イライラや落ち込みなどの精神症状の両面に効果があります。

加味逍遥散以外の気逆の処方としては、のぼせが強いときに使う女神散(にょ しん さん)、唇の乾燥や手のほてりを伴うときに使う温経湯(うん けい とう)、あまりひどくないけれど、どこかがずっと痛むときに使う五積散(ごしゃくさん)などがあります。女神散は、症状が移り変わる加味逍遥散に対して、一つの症状を訴える人に用います。

*全身の倦怠感や貧血がある場合

女性の三大処方である当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)や、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)など、血虚(けっ きょ)を改善する処方を使います。当帰芍薬散は、体が弱く、冷え、貧血がある人にも処方されています。 

また、十全大補湯も、体が虚弱で、貧血、疲労などとともに、産後、病後などで体力が弱っている場合にも使われます。

*アンチエイジングの処方、八味地黄丸

足がつる、かかとが痛む、目がかすむ、手足の先がしびれる、腰が痛いなど、腎に関わる症状が強いときには、八味地黄丸(はち み じ おう がん)を使います。

八味地黄丸には、地黄(じ おう)、 山茱萸(さん しゅ ゆ)、山薬(さん やく)、沢瀉(たく しゃ)、茯苓(ぶく りょう)、牡丹皮(ぼ たん ぴ)、桂皮(けい ひ)、附子(ぶ し)という8つの生薬(しょうやく)が使われています。疲れやすい人や下半身の冷えがある人、糖尿病の副作用を軽減する目的や、高齢者の頻尿などにも使われるアンチエイジングの漢方薬です。

ただし、体の冷えをとり除く作用があるので、ほてりやのぼせがある人にはおすすめできません。

八味地黄丸でほてりが強くなってしまう場合には、温める作用のある桂皮(けい し)、附子(ぶ し)の二つの生薬を除いた六味丸(ろく み がん)にします。単独で処方するだけでなく、加味逍遥散との併用も行います。


西洋医学の考え方

症状

40代後半から50代半ばまでの閉経前後のいわゆる更年期と言われる時期になると、卵巣の機能が低下して、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が急激に減少します。

そのため、ほてり、のぼせ、発汗、動悸、頭痛、便秘、イライラ、落ち込み、不眠、肌荒れなど、実にさまざまな不快な症状が起こります。

体の変化もさることながら、女性は、30代から50代にかけて、出産、子育て、子離れ、人によっては親との別れなど、実に変化が多く、精神的にもストレスのかかる状況にあります。この環境要因によって、症状がより悪化することもあります。

更年期障害の西洋医学的な治療としては、減少した女性ホルモンを補うHRT(hormone replacement therapy. ホルモン補充療法)があります。

HRTは、乳がんや子宮がんになるリスクが増えるといって恐れる人がいますが、乳がんになる確率は1万人に3人程度の増加です。

また、乳がんの人とそうでない人だと、そうでない人のほうがHRTをしている人が多かったというデータもあります。

 適度な運動で筋力や体力を保ちましょう。 気、血、水の巡りをよくする効果があります。


乳がんや子宮がんはむしろ、早期発見することが大切なので、きちんと検診を受けて、早期に治療するほうが重要だと考えられています。

しかし、HRTはやりたくないと言う人に無理やりおすすめする治療でもありません。主治医の先生ときちんと相談して、納得したうえで、治療を受けましょう。

一般的に、急にのぼせるなどの血管運動神経性障害が見られるときにはHRTが有効です。

これに対して、症状が多い、気分の落ち込みやイライラなどの精神的な症状が主といった場合には、漢方治療が向いています。

ただし、更年期障害だと思っていたらうつ病だったというケースもあります。おかしいなと感じたときは、ぜひ受診してください。


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